11月は寒さが暖かく感じられます。

 

Wintry Blast

 

が言った。

「手塚君と仲いいの?」

手塚とは廊下ですれ違ったときに、2,3つ言葉を交わしただけだ。
普段は人間関係に興味のないが聞くのは珍しい。

「そこまで仲良しなわけでもないよ。どうして?」
「手塚君、笑ってたから。」
「ウソ!?…手塚は凩13号だよ?」

どこからその数字は出てきたのとは呆れた。
手塚は無口といえば言い過ぎかもしれないが、クラスのこと騒いだところを見たことがない。
必要なことは彼の頭の中で綺麗に整理整頓されたものを淡々と述べる。
良く言えばクール、悪く言えば人を寄せ付けない。
だから、”笑う”という行為はただ事ではない。
それを見抜けるは凄いといえば凄いのだが…手塚が笑った理由がわからない。

、私は用事があるから先に帰るね。」
「了解。バイバイ!」

走って帰るを見送るとき、窓の外に白い雨粒の筋が見えた。
傘持ってきてないや…私も早く帰る準備しなきゃ。
ノート類を鞄に詰め込むと下駄箱まで一気に駆け下りる。最後の一段で足がもつれた。
目の前に広がる暗闇。少し冷たい制服の生地が頬を擦った。

「そんなに急ぐと怪我するぞ。」
「あ、手塚君ごめん。雨が…」

学ラン姿の手塚がちょうど前にいたので派手に転けることはなかったが、それでも手塚にぶつかったのは間違いない。
彼は衝突箇所をさすりながら、鞄を探る。

「傘なら貸そう。」
「でも手塚が…」
「俺は大丈夫だ。もう一つ持っている。」
「あ、ありがと。」
「急いで帰るな、。今度は事故に遭いかねない。」
「わかってるって。じゃーね!」
「あぁ。」

少し経ってから、手塚は制服の上着を脱いで頭上を覆った。
服で雨粒をヒラリと交わして走り去る手塚は、やっぱり凩13号。

 

−Fin−

 

(2008/11/23)