浴衣を新調して気分がよかったのは昨日まで。

 

underwater fireworks

 

今朝起きてみると、窓の外は大荒れ。天気予報も喜ばしくない結果を示していた。

「どしゃ降りかぁ…昨日はあんなに晴れてたのになぁ。」

今晩行われる花火大会で、蓮二に浴衣姿をお披露目しようと先週の休みにこっそり買いにいったのだ。
本人に伝えていなかったのでドッキリを期待していたが、この雨では予定変更である。
夕方前、携帯が鳴った。蓮二からだ。朝から雨足が変わらないから花火大会は中止、待ち合わせのキャンセルだろう。

「もしもし。蓮二〜」
「今日は花火大会中止だから会えないね、とお前は言う。」
「今日は花火…先に言われちゃった。」
、家に行っても構わないか?」
「今日?」
「花火を見せてやりたくてな。」
「…どういうこと?別に来るのは構わないけど。」
「後でわかるさ。後程、邪魔する。」

雨がしとしと降る中、蓮二は和傘を差してやってきた。花火セットと透明なバケツを携えていた。

「ホントに花火持ってきたんだ。」
「いつも通りガレージで用意するぞ。」
「うん、いいよ。そうだ、ちょっと準備するから待ってて。」
、セロテープを借りても構わないか。」
「いいけど…?」

用途に疑問を抱いたが、はせっかく蓮二がこうしてやってきたのに浴衣を披露しないわけにはいかない、と家の中に一端戻った。
ガレージへ戻ってみると、少し驚いたような表情をしている蓮二を発見した。

「へへっ、いいでしょ。」
「馬子にも衣装、だな。」
「素直じゃないわね。」
「すまない、冗談だ。似合っているぞ。」

一方、蓮二の方を見てみると、花火の数本にセロハンテープが巻き付けられていた。

「これ、どうしたの?」
「後のお楽しみだ。」
「…変なの。」

2人は普通に花火をはじめた。光が瞬いては地面に吸い寄せられるように落ちていく。
幾度か繰り返し見ていると、周りに煙が黙々と立ちこめて更に光が強調される。
半分ほどやり終えた頃、蓮二が先ほどのセロハンテープを巻き付けた花火数本を手にした。

「それ、どうするの?」
「水中花火は聞いたことあるか?」
「水中…」

終えた花火を入れるバケツとは別に、新しく水を張ったバケツを正面に置くと、
蓮二はセロハンテープ付きの花火に火をつけ、そのままバケツの中へ花火を入れた。

「蓮二!?」

何やってるの!?と慌てるは目を丸くした。水の中で花火が燃えている。
あり得ない光景を目にして、口が開いたまま動きを止めていた。

「驚いただろ。」
「な、なんで〜?!どうして!」
「俺とお前の愛はこの程度では消せないという証明だ。」
「…っ!そんな恥ずかしい台詞…よく言えるわね。」

の頬は花火のように色鮮やかに染まっていた。

 

−Fin−

 

(2015/01/13)