やっときた。
きてしまった。私の誕生日。
期待しても、結果はわかってる。

 

突拍子もなく

 

ついにこの日がきた。
今日はあの子の誕生日。
今日こそは必ず…!

「英二、今日は早いんだね。いつもは遅刻寸前なのに。」
「そ、そ、そうかにゃ?不、不二。」
「緊張、してるの?挙動不審だよ。」
「あの子の誕生日なのー!」
「あぁ。で、何を渡すつもりなんだい。」
「何渡すかまだ迷ってるんだよー。」
「…英二?もう買えないんじゃないかな。」
「はっ…!」
「忘れてたんだね…。僕はもう知らないよ。」

ガクッと英二は肩を落とした。低い声で唸っているばかりだ。
そうしていると、伏せていた英二はいきなり顔を輝かせて言った。

「そうだ!俺をあげればいいんだ!」
「…身売りするのかい?」
「なっ!違うっての!」

不二はからかいながらクスクスと笑った。



「おはよ、。」
「なんだ、か。」
「なんだとは何よ。はい、プレゼント!」

といっては大きな紙袋を渡した。小さな手紙を添えて。

「わ、デカッ。ありがとう。毎年ぬいぐるみ大きくなってるね。」
「来年はもっと大きいのにするよ。」
「持って来れないでしょ。」

は紙袋と手紙を受け取ると、校舎の違うに手を振り教室へ向かった。
校舎内の廊下は外よりはましだが、やはり寒い。
急いで教室の戸を開けようと、取っ手に手を掛けた。
すると、力を入れてもいないのに戸が独りでに開き、中から誰かが飛び出してきた。



「もうすぐ来る時間だよ…」
「そんなに言わなくても来るよ。休みじゃなければ。」
「やめろよー!」

英二は不安になったのか、教室のドアを開けて飛び出した。

ドスッ

「うわぁ!」
「きゃっ!」

(誰かに当たった…?)
(だ、誰…!?痛っ!)

勢いが強すぎて、相手を押し倒していた。
誰かが私を押し倒した。両者、相手を見て赤面した。

…さん!?」
「英二君!?」

名前を呼ばれて動揺していた。は驚いて「どいて」の一言も声にできなかった。
英二は固まった後、しばらくしてから我に返り、の上から退いた。

「ごめん、大丈夫?」
「う…うん。」
(今じゃなきゃ、チャンスが逃げる)
さん、ちょっと…いい?」
「え?」

は目を丸くした。

「い、いいけど?」
「やった!ちょっとついてきて。」

英二はの手を掴んだ。掴まれた手が熱い。
そのまま英二は手を引っ張って、どこかへ連れて行こうと走り出した。

「ここでいいかな。」

何処へ行くかを全く決めないまま走ったので、人気の少ない場所に身を隠した。

「ね、一体何?」
「あげたい…モノがあるんだ。大きいけど、いいかな?」

そう、問いただす。の頭の中で、理想と現実がぐるぐると混ざり合う。

「でも、なんでくれるの?」

英二は一呼吸置いて告げた。

「今日、誕生日でしょ?」

は何故か力が抜けて座り込んでしまった。顔を隠したまま。

「なんで知ってたの。」
「…だから。」
「え?」
の事、好きだから!」

座り込んでいるに、英二は覆い被さるように抱きしめた。

「俺からのプレゼントは、俺!」
「あ…りが…と…ぉ。」

突拍子もないことを言い出した英二に、は喜びを隠せなかった。
それからは、明るく過ごす二人がどこでも見られるのだとか。

 

−Fin−

 

(2004頃)