狙うはただ一つ。

 

supplanting his superior

 

氷帝でレギュラーといえば2種類ある。
テニスをするものと、支えるもの、つまりテニス部部員とマネージャーだ。
マネージャーの中でも、部長に等しいものがいる。
テニス部部長を支える存在だ。言い換えると「跡部の専用」である。

「跡部部長、今日の練習メニューはこれでよろしいでしょうか?」

跡部は手渡された書類に目を通す。

「向日と日吉の走り込みを2セット追加しておけ。それと忍足のボレーを1セット追加だ。」
「はい。」
「あぁ、それとだな…。」
「何でしょう?」
「こいつを日吉に渡しておけ。」

託されたのは封筒だった。

「日吉君に…?」

人の手紙だ、中身を見て確かめるほど気になるものでもない。
向かった先はBコート。演舞テニスを使う人と、ぴょんぴょん跳ねる人が休憩中のようだ。

「お、!さぼりか?ガハハ。」
「そんなんじゃありません。次の練習試合が始まるまでに走り込み2セット終わらせてくださいね。日吉君も。」
「そんなことだろうと思ったよ。」
「くそくそ跡部め、休憩も取らさねぇのかよ!」
「あ、それと日吉君。これ、部長から。」

封筒を渡すと、は次の仕事へ行った。

(同じ部内だったら、直接言えばいいだろ。)

バラの挿し絵が入った、たいそうな手紙だ。内容はいたって単純明快だった。

をそばにつかせたいならさっさとのし上がってこい】

これはエールか、はたまた単なる挑発か。胸の奥底で炎が静かに燃え上がる。

「やってくれるじゃないですか。」

<これだから部長の座は…>

本人も気付かないうちに手に力が入っていた。

「おい、日吉。さっさと終わらせるぞ。」
「わかってますよ。」

手紙をしまうと、急かしてくる向日の方へ走っていった。

<いずれ奪い取ってやる>

 

−Fin−

 

(2007/11/19)