自分が想ってるほど想いは伝わらなくて。

 

Strolling

 

悲しいかな、堂々巡りで終わる一日。
追いかけても追いかけても素っ気ない態度の君を見て、今日もまたふらふらと吸い込まれるのであった。
海堂はランニングの最中だった。
堤防横を通過し、公園の入り口に差し掛かったときに、三毛猫がこちらをじっと見ているのを発見した。

「フシュー」

一度深呼吸し三毛に再び目をやると、ぷいと方向転換して走っていってしまった。
行く先はちょうどランニングコースにしている方向だ、海堂は三毛のペースに合わせて追いかけた。
時折振り返っては走り、振り返っては走りを繰り返した後に辿り着いたのは空き地の入り口だった。
いつの間にかランニングコースから外れていたらしい。

「にゃーご、にゃーご」

三毛に呼ばれた。気持ちだけの柵が行く手を阻む。海堂は有刺鉄線を跨いで空き地の中へ入った。
葉の長い草むらを手で掻き分けると、荷物用の段ボールの中に子猫が沢山入っていた。

「捨てられたのか?」
「にゃー」

海堂の問いかけに対し、子猫は無邪気に鳴いた。

「誰!?何…してるの?」
「お、俺は…」

まずい、勝手に敷地に入った上に子猫がいる。何か言われるかもしれない。
子猫に気をとられていた海堂は後ろを振り返った。
同じくらいの歳の女の子が買い物帰りのビニールをぶら下げて立っていた。
海堂は咄嗟に子猫を自らの背で隠した。そのあと、よく見た顔だと認識した。

「…あれ?もしかして海堂くん?」
「なんだ…か。」
「こんなところまで来て何してるの。」

楽しそうに語尾を和らげながら、落ち着かない様子の海堂に問いかけた。

「三毛ちゃんに連れてこられたのね。」
「…フシュー」
「この子、捨て猫が居るところならどこでも連れていってくれるのよ。」
「知ってたのか。」
「うん。私の家マンションだし、全部は世話できないから、ここだけでもと思って…」

は徐に買い物袋からパンと牛乳を取り出した。
先程は気づかなかったが、段ボールの横に置いてあった皿に子猫の食事を用意した。

「でも、そろそろこの子たちとも【お別れ】しないといけないかなって。」
「問題あるのか?」
「この土地が売却されたから、もうすぐしたら建設が始まるの。」
「あぁ…」

はご飯に貪りつく子猫たちを撫でながら伏し目がちに答えた。
それは普段あまり目にしない表情だった。

「手伝おう。」
「…え?」
「探すんだろ、里親。」
「大変だけどいいの?」
「保健所にはやらねぇ。」

海堂は語気を強めての方を見た。

「ありがと、海堂くん。」

想いが通じた気がした。

 

−Fin−

 

(2015/02/01)