扉を開けようとしたら勝手に開いた。

 

ソノママ

 

急いでいた彼と軽くぶつかった。

「あ、わりぃ。」

ハンカチを手に持ち、下を向いたまま彼はどこかに消えた。

「若…?」

もしかして、泣いてた!?
にわかに沸き上がる笑いを堪えながら、若の机の上の分析を開始する。
筆箱、ノート、教科書、眼鏡ケース。
あいつ、眼鏡なんかかけてたっけ。コンタクト?…がズレたのかな。
大方予想がついたし、ちょっとイタズラしてみよう。



若が教室に戻ってきた。


「お帰り!若ちゃん!」
「…気持ち悪いからやめろ。」

一瞬、席に座ろうとしたが、若は違和感に気がついた。
若ちゃん、なんて言うからわからなかった。

、誰のを使ってるんだ?」
「あなたので〜す。」
「お前、目は良いだろ。視力落ちるぞ。」

若は、が無断でかけた自分の眼鏡を取り上げた。

「あー、せっかくかけたのに…」
はそのままの方がいい。」

軽く頭を撫でられた。と同時に、おでこに柔らかいものが音を立ててあたる。

「え…ちょっ…!」
「眼鏡があると邪魔だからな。」

デコチューを喰らったは、しばらく頬がほんのり染まったまま硬直した。

 

−Fin−

 

(2008/01/17)