扉を開けようとしたら勝手に開いた。
ソノママ
急いでいた彼と軽くぶつかった。
「あ、わりぃ。」
ハンカチを手に持ち、下を向いたまま彼はどこかに消えた。
「若…?」
もしかして、泣いてた!?
にわかに沸き上がる笑いを堪えながら、若の机の上の分析を開始する。
筆箱、ノート、教科書、眼鏡ケース。
あいつ、眼鏡なんかかけてたっけ。コンタクト?…がズレたのかな。
大方予想がついたし、ちょっとイタズラしてみよう。
*
若が教室に戻ってきた。
「お帰り!若ちゃん!」
「…気持ち悪いからやめろ。」
一瞬、席に座ろうとしたが、若は違和感に気がついた。
若ちゃん、なんて言うからわからなかった。
「、誰のを使ってるんだ?」
「あなたので〜す。」
「お前、目は良いだろ。視力落ちるぞ。」
若は、が無断でかけた自分の眼鏡を取り上げた。
「あー、せっかくかけたのに…」
「はそのままの方がいい。」
軽く頭を撫でられた。と同時に、おでこに柔らかいものが音を立ててあたる。
「え…ちょっ…!」
「眼鏡があると邪魔だからな。」
デコチューを喰らったは、しばらく頬がほんのり染まったまま硬直した。
−Fin−
(2008/01/17)