たった一枚の扉でも拒む。
心中立て
それがたとえ洗面所の扉であろうと。
「トイレまでついてきなさんな、。」
「だってぇ…ずっと一緒にいたいんだもん。」
…言葉の意味を取り違えとるぜよ。全く困った子じゃのお。
「恥ずかしいじゃろ。」
「私はいいよ。」
いやいや、お前さんが良いとか悪いとかじゃのうて、トイレについてくることが問題なんぜよ。
シッシッと手でを追い払うと、急いで扉の鍵を閉めた。
すると、外でなにやらドタバタと音がし始めた。
きっとまたが暴れとる。はやいとこ、出んといかんぜよ。
*
「はぁ…お前さん、どこまで子供なんじゃ…」
ベッドの上には大きなマッシュルーム、ではなく布団にくるまった…拗ねとる。
「ほれ、出てきんしゃい。」
マッシュをパンパン叩いても、少しモゾモゾ動くだけで出てくる気配がない。
好きなお菓子をやるといっても、デートに誘っても駄目。
どうしたらええんじゃ?
万策尽きた頃に、マッシュが口を開いた。
「雅治、私のこと好き?」
「もちろん。」
「ホントに?」
「あぁ。」
「ホントに、ホントに?」
「世界で一番好いとうよ。」
「…嘘だ。」
そこまで言わせて、疑うか?お仕置きが必要じゃの。
の弱点は一つ。脇腹ナリ。
今動いたときに見えたから、人差し指で軽くつついてやる。
「ひゃ!」
マッシュは崩れてが出てきた。面白い奴ぜよ。
「よーくーも、彼氏を疑ったのぉ?」
仁王はの上に覆い被さって、お仕置き体制に入る。このまま襲ってしまおうか?
「だって詐欺師だし、いっつも雅治の後ついて行ったら煙たがるし、嫌われてるんじゃないかって…」
ジーッと見つめてやると、見る見るうちにの顔が泣き顔に変わっていく。
睨んでるつもりないんじゃが。心って、なかなか伝わらんもんやの。
「わかっとらんのぉ…お前さんの前じゃ、俺はただの男じゃ。そうじゃなきゃ、こんな面倒なことせん。」
「ま、まさは…るぅっ…」
「泣きなさんなって。可愛い顔が台無しぜよ。」
近くにいる。きっとそれが、愛する誓いの証拠。
−Fin−
(2008/01/20)