たった一枚の扉でも拒む。

 

心中立て

 

それがたとえ洗面所の扉であろうと。

「トイレまでついてきなさんな、。」
「だってぇ…ずっと一緒にいたいんだもん。」

…言葉の意味を取り違えとるぜよ。全く困った子じゃのお。

「恥ずかしいじゃろ。」
「私はいいよ。」

いやいや、お前さんが良いとか悪いとかじゃのうて、トイレについてくることが問題なんぜよ。
シッシッと手でを追い払うと、急いで扉の鍵を閉めた。
すると、外でなにやらドタバタと音がし始めた。
きっとまたが暴れとる。はやいとこ、出んといかんぜよ。



「はぁ…お前さん、どこまで子供なんじゃ…」

ベッドの上には大きなマッシュルーム、ではなく布団にくるまった…拗ねとる。

「ほれ、出てきんしゃい。」

マッシュをパンパン叩いても、少しモゾモゾ動くだけで出てくる気配がない。
好きなお菓子をやるといっても、デートに誘っても駄目。
どうしたらええんじゃ?
万策尽きた頃に、マッシュが口を開いた。

「雅治、私のこと好き?」
「もちろん。」
「ホントに?」
「あぁ。」
「ホントに、ホントに?」
「世界で一番好いとうよ。」
「…嘘だ。」

そこまで言わせて、疑うか?お仕置きが必要じゃの。
の弱点は一つ。脇腹ナリ。
今動いたときに見えたから、人差し指で軽くつついてやる。

「ひゃ!」

マッシュは崩れてが出てきた。面白い奴ぜよ。

「よーくーも、彼氏を疑ったのぉ?」

仁王はの上に覆い被さって、お仕置き体制に入る。このまま襲ってしまおうか?

「だって詐欺師だし、いっつも雅治の後ついて行ったら煙たがるし、嫌われてるんじゃないかって…」

ジーッと見つめてやると、見る見るうちにの顔が泣き顔に変わっていく。
睨んでるつもりないんじゃが。心って、なかなか伝わらんもんやの。

「わかっとらんのぉ…お前さんの前じゃ、俺はただの男じゃ。そうじゃなきゃ、こんな面倒なことせん。」
「ま、まさは…るぅっ…」
「泣きなさんなって。可愛い顔が台無しぜよ。」

近くにいる。きっとそれが、愛する誓いの証拠。

 

−Fin−

 

(2008/01/20)