わずかに捕まれただけの左手をふりほどく。するとね、アタシの彼は大あわて。
「私は何か悪いことでもしましたか?」
捕らわれの瑣末
「ううん。」
いつもベッタリとくっついているせいなのだろう。
表には出さないけれど、内心、不安で仕方ないのが手に取るようにわかる。
アタシなりの愛情表現。
そのままにしていると、だんだん悲しそうな顔になっちゃうから…
「ギュゥー」
真正面から抱きついてやる。
「な、さん!?」
あら、もっと慌ててる。テンパっちゃった?
「こ、こんな公衆の面前でっ…」
「ひーろしー」
周りなんて気にしない、気にしない。その眼鏡の奥ではどうせ動揺してるんでしょ?
別に良いじゃない。周囲がどう見ようと何言おうと。
「さん!」
柳生は少し声を荒げた。
「こういうことは室内でしてください。」
「…ココ、一応室内だよ?」
「そういう意味じゃありません。家とか、人目のつかないところでやりましょう。」
「…ひろし、なんかその言い方やらしいよぉ。」
もうほっぺたが真っ赤になっている。
そろそろ、この愛らしい紳士を許してやるか。
−Fin−
(2007/11/19)