花吹雪があたりを取り囲んでいる。

 

SakuraChange

 

くじ引きの結果、先に場所を取る係になったとブン太は朝早くから人気のスポットにやってきていた。
早起き担当の場所取りは、くじ引きでいうところの【ハズレ】だ。
まだ眠い眼をこすりながら、ブルーシートを広げて花見の荷物一式を置いた。

「ふぁ〜、眠い。」
「腹減ったなぁ。」
「食糧係が来るのは何時間も先だよ?」
「花見でいっぱい食べると思って、朝あんまり食べてねぇんだ。」

ブン太はそう言うと、少しばかり持ってきていたお菓子の包みを開けた。

「あぁ、ちょっと!準備さっさと済ませてからにしようよ。」
「ちぇ〜。」

はお菓子の袋を取り上げて鞄の上に置いた。準備といっても、メインは場所取り。
ブルーシートを二人で広げていると、桜の花びらのように風に弄ばれていた。
なかなか広がらないシートに、風で乱れた髪。は少しばかり苛立ちを覚えた。
重しの荷物を置いてようやく完成だ。

「風きつくない?お弁当とんでいっちゃったりして。」
「俺が受け止めてやるから安心しろぃ。」
「全部胃袋にいきそうね…」

そういいながら、は髪を束ね始めた。髪ゴムは鞄の中だ。
片手で束ねた髪をおさえながら取り出すついでに、さきほどブン太が開けていた袋からポッキーも取り出した。
むしゃり。
ブン太はそれを見逃さなかった。

「あー!お前、取り上げといいて…!」
「糖分補給よ、糖・分・補・給!」

平然と髪を束ねていると、ガムテープでシート同士をくっつけていた手を止めて、ブン太がの方へ寄ってきた。
ブン太はじっと見つめて、目を逸らさない。

「何…?」

パキッというお菓子の折れた音とともに唇が柔らかい感触を覚えた。
気づけばブン太は口をもぐもぐさせて。が咥えていたポッキーの片割れを食べていた。

「お前だけズルイだろぃ。」
「な、な…!」

理解したの顔は桜のように火照っていた。後からやって来るメンバーには内緒の話。

 

−Fin−

 

(2015/08/06)