「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」

 

run run

 

声が聞こえてくる。それは時間が経つにつれ、だんだん大きなものになった。

「じぃぃぃぃぃぃぃぃ」

F1の車が通り過ぎて行ったように僕の耳元を掠め、追い風と僅かな残り香がその場に置いてけぼりにされていた。
数メートル先で自転車は一時停車した。

「おはよっ!早くしないと置いてっちゃうぞ。」
「おはよう、。今日も競争する?」
「…スタート!」

ブレーキから手を離したのと同時に、僕は足に力を込めて加速した。
何の変哲もない平坦な道だが、自転車に追いつけば何かが変わるかもしれない。
僕はに手を伸ばした。

(届け!)

 

−Fin−

 

(2011/03/01)