「もっと手首使いーや、蔵ちゃん。」

 

おって当たり前

 

「言われんでも使っとるわ。」

ベンチで口出ししとるんはや。俺の練習のときばっかり現れて、ホンマ邪魔!

も練習あるやろ。はよ帰れ。」
「残念でした。今日、女テニは自主練やねん。せやから蔵ちゃん。一緒に練習しよっ!」
「あかん。」
「なんでぇ!?」

誰がと練習するねん。
球はまともに打たれへん。どっかに飛ばす。終いに疲れてへたり込む。
せやったら、壁とこのままラリーしとる方が数倍マシや。何言われても無視して練習せな。



「蔵ちゃん、やろーや。」

パコーン

「練習しよーや。」

パコーン

「一緒に練習しよー!」
「うるさいわ、毒手喰らいたいん?」
「包帯に火ぃ、つけたろか。」
「…冗談きついわ、。」

白石は壁打ちを再開した。

(そんなんしたら焼けただれて、ホンマの意味で包帯いるやん。)

ボソリと呟いたそのとき、打球がコースから外れた。
ボールの向かう先にはがいた。

「危ない、よけろ!」

バシッ

「いったぁ〜。」

は両手で白石のボールを受け止めた。その姿はキャッチャーそっくりだ。

「蔵ちゃん…」

ラケットを持つと、受け止めたボールをトスした。

「どこにボール打っとんのじゃー!」

打ち返されたボールは、見事白石の顔にクリーンヒットした。

「っつ!」
「やっぱアタシが教えないと駄目やね。」

ラケットで白石を指すと、はニンマリと笑った。

「お前、いつの間に…」

気がつかないうちに、コントロールが向上している。
それに、打球の威力も格段にアップしている。


「…しゃーないわ。」

練習につき合うたろか。

 

−Fin−

 

(2008/01/22)