「もっと手首使いーや、蔵ちゃん。」
おって当たり前
「言われんでも使っとるわ。」
ベンチで口出ししとるんはや。俺の練習のときばっかり現れて、ホンマ邪魔!
「も練習あるやろ。はよ帰れ。」
「残念でした。今日、女テニは自主練やねん。せやから蔵ちゃん。一緒に練習しよっ!」
「あかん。」
「なんでぇ!?」
誰がと練習するねん。
球はまともに打たれへん。どっかに飛ばす。終いに疲れてへたり込む。
せやったら、壁とこのままラリーしとる方が数倍マシや。何言われても無視して練習せな。
*
「蔵ちゃん、やろーや。」
パコーン
「練習しよーや。」
パコーン
「一緒に練習しよー!」
「うるさいわ、毒手喰らいたいん?」
「包帯に火ぃ、つけたろか。」
「…冗談きついわ、。」
白石は壁打ちを再開した。
(そんなんしたら焼けただれて、ホンマの意味で包帯いるやん。)
ボソリと呟いたそのとき、打球がコースから外れた。
ボールの向かう先にはがいた。
「危ない、よけろ!」
バシッ
「いったぁ〜。」
は両手で白石のボールを受け止めた。その姿はキャッチャーそっくりだ。
「蔵ちゃん…」
ラケットを持つと、受け止めたボールをトスした。
「どこにボール打っとんのじゃー!」
打ち返されたボールは、見事白石の顔にクリーンヒットした。
「っつ!」
「やっぱアタシが教えないと駄目やね。」
ラケットで白石を指すと、はニンマリと笑った。
「お前、いつの間に…」
気がつかないうちに、コントロールが向上している。
それに、打球の威力も格段にアップしている。
「…しゃーないわ。」
練習につき合うたろか。
−Fin−
(2008/01/22)