5月は快晴の空が引き寄せます。
off season
先日まで桃色一色、春の季節感漂う風景だったが、
新たに芽吹き始めている枝の先は次の季節を待ちわびている。
「すっかり散っちゃったね。」
花見で賑わっていた河川敷も、今では閑散としている。長期連休の親子連れがいる程度だ。
足下に時々落ちている四月の忘れ物は雨風によって栄華を失っていた。
英二はシートを広げると、朝作ってきたお弁当を披露した。
弁当の中身は種類豊富で箸が進む。
「はお花見した?」
「ううん、してない。花粉症でダウンしてた。」
「あらら〜。」
「テニス部はやったの?」
「んーにゃ、ランキング戦があったからやってない。」
「そっか…残念だね。せっかくこんなにいいスポットがあるのに。」
「レギュラー死守できたから問題なし!それに…」
Vサインすると、英二は食べている手をいったん休めて立ち上がった。
行儀悪いよ、と言いかけたが、どうせ聞かないだろうからやめた。
近くの桜の木の下まで走っていくと、の方を向いてにこっと笑った。
(一体、何考えてるんだか。)
英二は軽い身のこなしで枝に手を伸ばして着地した。
シートの場所まで帰ってくると手に何か持っていた。
「花見はまだ間に合うよん。」
のヘアピンに残っていた桜の花を挿してニシシと英二は笑った。
「ほら、咲いた。」
−Fin−
(2009/01/07)