「休みになったら公園に行かない?」

 

もろてにふわり

 

そう言い出したのはつい昨日のことだ。
周助は片手に一眼レフのカメラを持ちながら意気揚々としていた。
出かける用事といえば、デートか写真家のお供をするときだ。アシスタントは快く承諾した。

「どこの公園まで?」
「クスッ、内緒。」

場所を尋ねると大抵教えてくれるのだが、今回はそうではないらしい。



撮影当日、家から少しばかり遠い駅に到着するや否や小道具が登場した。

「着くまでコレつけてくれる?」

手渡されたものは目隠しだ。

「つける必要あるの?」
「うん。」

しぶしぶ視界を奪われると、周助の腕を掴みながら恐々行き先まで足を運ぶ。
閑散としている場所で、人の目に曝される心配はないのが幸いだ。
20分程歩いたあたりで周助は立ち止まった。

「3,2,1…いいよ、目隠し外してみて。」

赤黄赤赤黄…
色とりどりの木の葉を揺れ動かすそよ風が、景色を更に引き立てている。
目の前に広がる一面の紅葉には息を飲んだ。

「凄い…きれい。」
「だろ?」
「ありがとう、周助。」

周助は紅葉を暫く眺めた後、持参していたカメラで撮影し始めた。
後ろ姿はいつ見ても楽しそうだ。きっと出来上がる写真も良い仕上がりだろう。
目を下に向けると、落ち葉が重なり合い、足元は布団のようになっていた。

「すごい、ふかふかだね。」

−カシャ−

音のした方を見やると、カメラマンは紅葉の布団に寝っ転がりながら、こちらをレンズ越しに覗いていた。

「あ、撮ったなー!」
「クスッ」
「変な顔してなかった?」
「さぁ?現像するまでわからないよ。」

クスクスと笑いながらそう言われ、は体温が上がる感覚を覚えた。
恥ずかしい、単純に熱くなる顔を隠したかった。ただ、それだけ。
周助に覆い被さるように自分も紅葉の上に寝っ転がった。
顔を胸にくっつけて、羞恥を必死に誤魔化した。

「…?」
「んー」
「一緒に撮る?」
「うん。」

残り一枚のフィルムに二人の少し照れた表情が綺麗に焼き付いた。

 

−Fin−

 

(2013/03/10)

4月発売のくつろぎコレクションの絵柄より。