「ちゃん、購買部でお昼ご飯買いたいんだけど。」
飯時
「ちゃん、購買部でお昼ご飯買いたいんだけど。」
「やめておいた方がいいんじゃない?」
「なんで?」
「正午の購買部には怪物が出るのよ〜。」
青学に転校して以来初めて、弁当ではなく購買部でお昼を買って食べる日がきた。
だが、友達のちゃんはあまりオススメではないようだ。
怪物って…学校の七不思議でもあるまいし。しかも昼間から出るなんて可笑しい。
「ご飯持ってきてないからどのみち行かなくちゃ。場所教えて?」
*
購買前には己の腹を満たすべく、多くの人が密集していた。
その塊の向こうで、叫び声が聞こえた。誰だろう。
「…ちゃーん!おばちゃーん!俺、焼きそばパンとタマゴサンドとおにぎりの鮭、それにコーヒー牛乳!」
「わかったから、ちゃんと列に並びなさーい。」
「はーい。」
列になって順番を待つ人達がゲラゲラと笑う。
その視線の先には学ランを少し着崩した、好青年がいた。学年を確かめると2年生である。同じ学年だ。
それにしても、食べる量が多い。食べ盛りなのだろうか。
「あーぁ、やっぱり桃城くんが出た。」
「んなっ?!人を幽霊みたいに言うなよなぁ。」
「、知り合い?」
「うん。一年の時、同じクラスだったの。あ、こっちはっていうの。転校してきたばかり。」
「よろしくな、。」
最初の印象は、笑顔が素敵なことと、食欲旺盛なことだ。
「たくさん食べるんですね。」
「あぁ、弁当だけじゃ足りないから毎日購買で買ってんだよ。」
「え、お弁当も…?!」
前言撤回。食べ過ぎ。
この桃城という人は一体、購買部の年間売り上げの何パーセントに貢献しているんだろう。
少し観察していると、今からご飯!といわんばかりの表情をしている。胃袋は底なし?
冗談交じりでこんなことを言ってみた。
「購買のパン、全部食べちゃいそうですね。」
「それがね、食べたことあるのよ。全部。」
「…!」
「そのあと周りの生徒達に怒られたからなぁ、ひでぇよなぁ、ひでぇよ。」
そんな他愛ない話をしていると、自然に桃城へと順番が回ってきた。
「が先に買っていいぜ。」
「あ、ありがとうございます。」
「いいって、いいって。」
どうしてだろう。もう少しだけ、ここにいたい。
そう願い事をすると、心の奥でキュッと音がした。
−Fin−
(2008/02/06)