「げーんいっちろーう!」

 

loincloth

 

勢いよく部室の扉を開けたのはだ。

「何だ、部室の扉を開けるときはノックしろといつも言っているだろう。誰かが着替えていたらどうする。」
「だって急ぎの用事だもん。」
「急ぎだと?」

今は全国大会を控え、調整期間中である。委員会や学校行事も特にはない。
少し戸惑いを隠せないの表情は、一体どこからきているというのだ。

「部長の招集。命令だよ!急いで!」

真田は書きかけの部活日誌を託し、招集もとに向かった。



手術が成功してからというもの、幸村は今まで以上に活気に満ちている。
振り回される部員達にとって、それはたまらなく辛いものではあるが、尊敬している人物である以上、逆らうことはしない。

「みんな集まったかな?」

部員の数を確認する。一人足らない。

「柳、真田は?」
「あと10秒でくる。」
「…そう。」

幸村はフフッと笑みをこぼした。

「遅れてすまない。」
「いいよ。今日は弦一郎(+α)に関することだから。」
「俺に関する、だと?」

真田の五感は警鐘を鳴らしていた。以前受けた制裁の数々を思い出さずにはいられない。

「関東大会の前日、俺に言ったよね?『無敗で勝ち続ける』って。今日はその約束を破った君に罰ゲームをしようと思ってね。」

真田の顔から血の気が引いていく。なんだ、今回は一体何をされるんだ。

に作ってもらった褌をつけて校内を50周しろ。」
「むっ…!」
「この間の試合は立海の恥だ。それくらい、真田も理解してるだろ?それと、試合に負けた柳と赤也は3周でいいからね。」
「マジッスか!?」
「…致し方ない。」
「部室でがお待ちだ。もらってきなよ。」



机の上には赤・青・黄の褌が一枚ずつ並べられていた。

「…随分とカラフルだな。」
「…これ、ホントに履くんすか?」
「…当然だ。」

真田が青色の褌に手を伸ばしたときだった。

「弦一郎はこっち。」

は赤色の褌を指さした。

「なぜ色を指定する。」
「幸村部長の仰せの通りに従ってるだけです。まぁ、持ってみたらわかるよ。」

手にとると、その意味がわかった。
なんと重り(推定10s)が入っている。赤也は黄色、柳は青色で重りはない。
グラムの違いは、負け方の差(幸村の主観)だと説明された。

「一体幸村はどこを鍛えろというんだ。」
「弦一郎、ここは深く考えず、足腰の強化と考えた方が良い。」
「…そうか。」
「丹誠込めてつくったんだから大事に使ってねー。ちなみにカウントはワタクシが引き受けているので、さっさと走ってね。もし何周走ったかを誤魔化したり、タイムが遅いと部長に報告するから。」
「え、タイム計るんスか?」
「当然!」

その日の放課後、校内では、泣き顔にも似た変態まがいの真田が度々目撃されたそうだ。

「弦一郎〜!タイム落ちた!もう一周!」
「ぬおおおおお!」

 

−Fin−

 

(2008/02/03)