陽の差す色が橙色に変わってきた。

 

ころり ころころ

 

時計を確認すると、もうすぐ下校時刻になろうとしていた。
は勉強道具を片付けると、鞄を持って図書室を後にした。



この時間は部活を終えたばかりの生徒がドッと校門まで詰めかけてくる。
巻き込まれないように小走りで抜け出し、住宅街の細い道へと入ってゆくのがいつもの帰り道だ。
角を曲がって少し行ったところで、小石が道の真ん中に堂々と居座っていた。
丁度良い大きさだ。小学生気分で蹴ってみると、思った以上にとんでいった。

一蹴り、一蹴り。

家にだんだん近くなる。誰もいないのをいいことに歌ってみる。
調子よく思い切り遠くに蹴飛ばしたときだった。

「あ…!」

角を曲がってきた人の足元に小石が当たって動きを止めた。

「すいません!」
「あれ、さん?」

顔を上げるとクラスメイトがいた。

「ふ、不二くん…!?」
「へぇ、さん真面目そうなのに、石蹴りするんだ。意外だなぁ。」
「いや、あの、これは…」
「しかも歌ってたよね?」

は恥ずかしさのあまり、一気に顔が赤くなった。

「じ、じゃぁね!」

話を早々に切り上げ、は走り去ってしまった。

「クスッ」

不二は手に持っていたカメラで『小石と、走る少女』をフレームに納めるとシャッターを押した。

 

−Fin−

 

(2012/08/04)