ビリビリと袋を破る音が廊下に響いた。
辛辛テイスト
先週から全学年で三者面談が始まった。
授業は午前だけで、午後はほとんどの人は部活に向かうが、コイツは行かないらしい。
「英二に言って、時間代わってもらったんだ。」
「わざわざ私に合わせて?」
「他に理由がある?」
周助とはクラスが違うから、順番が回ってくるまで一緒に待っていられるが…
毎日会えるんだし、別に良かったのに。
待ち時間に食べようと、周助はお菓子を持ってきていた。
「あ、スルメ!」
駄菓子の細長いスルメはの好物だ。
ポリポリと端っこから味わって食べるのがセオリーだとか。
「うん、おいしい。」
「じゃぁ、僕はこれ。」
「その赤い物体は…」
「マイ・チリソース。」
「いつになく辛そうな色…」
周助は本来チョコレートやトッピングをつけて食べるスティックを、あろうことかチリソースにつけて食べていた。
「も食べる?」
「いっ…遠慮します。」
チョコがあれば食べられるけれど、見当たらないのでお断りした。
周助の味覚に合わせると、味覚だけでなく五感までおかしくなるときがある。
「そっちのスルメ、味見してもいいかな。」
「いいよ、はい。」
袋からスルメを取り出そうとしたら、周助はが咥えていたままのスルメに喰いついた。
どんどんスルメは短くなっていき、共々、あっという間に”味見”された。
「か、辛ーっ!」
「クスッ、チリソース、スルメにもいけるね。」
が廊下にいることも忘れて絶叫している横で、周助は楽しそうに笑った。
後の三者面談で、それぞれの担任に2人仲良く怒られるのであった。
−Fin−
(2011/04/28)