この世界の中で、私と貴方は置いてけぼり。

 

ふたりぽっち

 

面倒な委員会の用事が終盤にさしかかり、手を休めて校舎の外を見てみると、真っ赤な空が煌々とグラウンドを照らしていた。
机にはホチキス留めを終えた書類が積み上がっている。
1年から3年生までの、各学年の委員の人数分をセットし、間にアンケート用紙を挟み込んでおいた。
「今日までだから、明日一気にやっちゃおうか」なんて軽い気持ちで話し合ってたはずなのに、いざ学校へ来てみたら当の本人が欠席。
熱が出た?仕方ないことだけれど、担当はその子と二人だけ。
放課後の貴重な時間を使って、単調な作業を一人でこなした。

「ふぅ…」

思わずため息が出た。だが、まだ仕事は終わっていない。
これから、この書類の山を職員室まで届けに行かなければの用事は終わらない。
50部以上もある。ここは4階、流石に一度に運べないか。
教室の窓をもう一度見つめる。カーテンがひらひらと棚引いて心地よい風がの座席まで届く。

「あぁ〜、ここから書類を投げちゃいたい。」

呟いた直後だった。教室の扉が勢いよく開けられ、ピシャンと音が響き渡った。

「びっくりした…」
「あ、ワリぃ」

急いで入ってきた声の主は、低めの声で謝りの言葉を述べた。

「そんなに急いで、なにかあったの?」
「気づいたら財布がなくてな…最後に触ったのが教室で…」
「探そうか?」

ジャッカルは頷くと、まず自分の机を見始めた。
は教壇や忘れ物BOXを漁ってみる。

「いつ気づいたの?」
「ブン太になにか喰わせろ〜って言われたときな。机にもないか…」
「ロッカーは?」
「そういえば…!」

後ろのロッカーを覗くと、探していた物が体操着に紛れていた。

「あった、あったぞ!」
「よかった〜。なかったら死活問題だよね。」
「死活というか、死ぬな。」
「ふふっ、そうだね。」
「ところで、の方こそ一体何してたんだ?」

積み上げられた書類を手でパンパンッと叩くと、察したように憐れみの視線が返ってきた。
お互いがお互いをそんな目で見るのも可笑しな状況だ。

「それ、どうするんだ?」
「職員室に投げ込みに行くの。」
「一人でか?手伝うぜ。」

そう言うと、ジャッカルは山積みの書類を全て持ち上げてしまった。
これでは"手伝い"にはならない。

「は、半分ちょうだい!」
「大丈夫だって。それより、扉開けてくれ。」
「じゃぁ、2割くれたら開ける。」
「なんだそりゃ。」

山の一番上から、1部だけ器用にずらして渡してきた。どうやらこれがジャッカル的"2割"の量らしい。

「ほら、ドア。」
「もう…器用貧乏も大概にしなよ?」

ふたりぽっちで階下まで。
落ちていくのはもう少し先のお話。

 

−Fin−

 

(2015/11/23)