高校日本代表候補(U-17選抜)から2人が帰ってくると連絡を受けたは、不二宅にやってきていた。

 

HUGGY

 

由美子お姉さんのお手製ラズベリーパイを食卓に並べると、今日のお帰りパーティーは完成だ。
見事に飾られた食材を前に、は写真を撮った。

「早く食べたいなぁ〜。」
「周助と裕太が帰ってくる前に食べ始めちゃう?」
「…まだ待てます。」
「クスッ、あまり遅いと無意識のまま食べちゃうそうね、ちゃん。」
「そんな赤ちゃんみたいな…」

由美子お姉さんにからかわれていると、家の外を通る人影が見えた。見えた影は2人。
こうして会うのは暫くぶりで、少し胸がどきどきと鼓動していた。
玄関戸を開けると、テニスバッグを引っ提げた周助と裕太くんがジャージ姿で立っていた。

「ただいま〜!」
「ただいま。」
「おかえりなさい!」
さん、来てたんスか。」
「うん。由美子さんのお手伝いに…」
「ん?どうしたの?」

言いかけたの口が止まった。
周助の顔をしばらく見つめていたが、立ち所にの目には涙が溜まっていった。
堪えきれなくなったとき、そのまま走り去るように階上へと上がっていってしまった。

「兄貴も罪な男だな〜。」
「どういう意味だい、裕太?」
「な、なんでもねぇ。それより、放っておいていいのかよ。」
「もう少し経ってからフォローするよ。」



U-17に行ってしまう前はそんなこと思ってなかった。
周助が、遠い。今は、そばにいると、どうしても感じてしまう。
自分は釣り合わないんじゃないかと。
それは付き合う前も思ってはいたけれど、久しぶりに会って痛感した。どうしよう、私。



ラズベリーパイをたらふく食べ終わり、満足していた裕太は
デザートを持ったまま自分の部屋に入ったら、ベッドに寝ているを見つけた。
驚きのあまり皿をひっくり返すところだった。
裕太が覗き込んで様子をうかがうと、の頬には泣いていた跡がみられた。
静かに部屋を出ると、階下にいた周助を呼びにいった。

「兄貴。さん、俺の部屋で寝てるんだけど…」
「裕太の部屋?」
「で、どうするんだ?」
「やれやれ。」

周助は裕太の部屋に入ると、をゆっくり抱えてお姫様だっこした。

「裕太、部屋のドア開けてくれるかな?」
「はいはい。」
「はい、は一回だよ、裕太。」

何か言いたげな裕太だったが、素直にドアを開けると自分の部屋に戻っていた。
ベッドに寝かせると、周助は一緒になって寝転がり添い寝した。
の髪をいじってみたり、寝顔を楽しんだりしながら微笑んだ。

(起きたときが楽しみだなぁ)

 

−Fin−

 

(2013/07/24)