昨日からの機嫌を損ねているのはわかっていた。

 

早すぎる悲しみ

 

正直、なんで口も聞かないのか全くわからへん。
家に帰ってきても扉をバタンときつめに閉めて、無言。ため息までつかれる始末の非常事態だ。
痺れを切らした俺はソファーで本を読んでいるを問い詰めた。

「なぁ。喋らんとわからへんやん。」
「何が。謙也の方こそ。」

ツンとした表情を一切変えず、切り捨てられた言葉は怖い。
これ以上言わない方がええんちゃうかと後退りかけたが、ここで引き下がったら男としてアカン。
ええい、ここは勢いに任せてスピード勝負!

!俺の何があかんのや!何に怒っとるんや!」
「別に…」
「気分悪くなるようなことしとったらすまん。でも…言うてくれなわからへん!」
「とりあえずコレ、どけて?」

両腕で閉じ込めたのは流石にまずかったか…
ノリが大事だとは思っているが、使いどころを間違えた。がソファーとともに滲んで見える。

「本当にわからない?」
「あ、あぁ…」
「冷蔵庫。」

単語から蘇る記憶。
珍しいものが昨晩の冷蔵庫に入っていた。確かあれは美味しかった。絶品だった。

「プリン…!」
「買ってこい。」

命令を告げると、は再び本に視線を落とした。
ご丁寧に、購入時のレシートを机に置いてくれた。なるほど、家から15分の所にあるお店か。

「食べ物の恨みは恐ろしいな。」
「ちなみに、あと5分で今日の販売時間終わるから。」
「なっ…!?」

ダッシュなら任せとき!と言い残し、謙也はすぐさま家を飛び出した。
さっきまでの思い詰めた、自殺でもしそうなくらい重たい表情はなんだったのか。
フフッという笑い声が部屋に響いた。

 

−Fin−

 

(2016/09/26)

喧嘩→仲直りでリクエスト頂きました。