「これは何かなぁ?」

 

逆説メーカー

 

「私が長時間かけてじっくり作ったクッキーです。」
「うーん、そんな風には見え…」
「るでしょ?」
「そ、そうですねー…」

千石清純、只今ピンチです。
占いにも出ていたんだよねぇ〜。『恋人は無理強いをしてくるでしょう』って。
まさに今だ。さぁ、どうやって回避しよう。

「俺、ちょっと用事が…」
「さぁ、召し上がれ!」

やはり駄目か、終わった…俺の、舌…
クッキーを見る→逃亡を阻止される→食う→死が訪れる がお決まりのパターンだ。
クッキーから逃れたことはあるけれど、その後のフォローが大変だったのは記憶に新しい。

「待ってよちゃ〜ん、自分で味見した?」
「うん、したした。」

…嘘でしょ?こんなに黒いクッキーを食べられるわけがない。
かといって食べなければ拗ねるんだよなぁ。
千石清純、意を決して死に急ぎます。

パクッ

味が口の中に広がっていく。
あぁ、意識が…あれ?俺、倒れてない。ラッキー!
い、いや待て待て。この味は…

、誰に作ってもらったのかな?」
「あ、ひっどーい!これはちゃんとレシピ見て研究を重ねた結果なんだから!」

信じがたい。味が違う。
だが見た目は間違いなくの作ったものそのものだった。いつの間に上達したんだ。(味だけ)

「おいしかったよ。」

残りのクッキーもおいしく頂きました。一件落着…と、終わるわけにはいかなかった。

「こっちも全部食べてね!」

さらに黒い物体が新たに出現した。

「ちょっと失敗しちゃったやつなんだけど、清純なら食べられるよ!!」
「えぇと…もうお腹いっぱ「食べられるよね!」…いただきます。」

…うっ。耐えられない味じゃない。なぜって、死んでないから。

「まだこんなにあるのか…」

お皿の半分ほどに減ったどす黒いクッキーの山を見てそう思った。

「もう半分食べちゃったじゃない。がんばれー」

彼女は逆説メーカー。
そのプラス思考が俺を惹きつける理由。
それでも…
俺はこのクッキーを食べ続けなければならないことにかわりはない。

 

−Fin−

 

(2007/11/22)