困った子だわ
fawn on you
デートも終盤に差しかかり、そろそろお帰りの時間。
けれど赤也はそんな様子を全く見せず、次の乗り物へと向かう。
「遊園地といったら、これしかないよな。」
指さす方向には、どデカい観覧車がそびえていた。
(15分くらいなら…)
時計を見て時刻を確認する。終電は近いが、もう少し余裕はある。
「それじゃぁ、あれで最終だね。」
二人は箱の中に飛び乗った。
*
の普段利用している路線は利用者数が極端に少ない。
そのため、他の路線よりも終電の時間が数時間早いのだ。なんと不便なことか。
「、もっと景色を楽しもうぜ。」
どうしても時計が気になってしまう姿を見て、赤也が時計を取り上げた。
「あ…」
「どうせ一周するまで降りられないんだ・か・らっと。」
「か、顔近い…!」
顔から火が出そうなくらい恥ずかしい距離まで近づき赤也は制止した。
「なぁ、キスしてもいい?」
「この状態でどう断れと?」
「へへっ。」
軽く触れるだけのキスでも、赤也は満足気だ。
「ところでさ…」
「あー?」
「これ、遅くない?」
妙にゆっくりまわる観覧車。
ひょっとして、ひょっとするかもしれない。
「あぁ、2分の1のスピードらしいぜ。」
「ええぇ!?」
予定が大幅に狂った。
この遊園地はご丁寧に2倍の時間乗せてくれるらしい。
「終電間に合わないじゃない…」
「俺ん家泊まれって。今日と明日は親いねぇからよ。」
その言葉にピンときた。
(…こいつ、確信犯だ…っ!)
残り15分。
下降してゆく箱の中には、ニコニコしている赤也をよそに親への言い訳を必死に考えるがいた。
−Fin−
(2007/12/19)