今日もアキラが杏ちゃんを見つけては声をかけていることに、私は安堵感と少しの苛立ちを募らせていた。

 

Exactly!

 

アキラはいつになったら行動に移すのか、話題は完全に”恋バナ”。
きっとこのまま平行線でポシャる、というのが深司の意見だ。
としてはいつも煙に巻かれているアキラを見ているのが楽しい反面、早く一波乱ないものかと進展が待ちきれない。

「深司は何かないの?」
「何が?」
「恋愛事。」
「あったらとっくにが気づいてるだろ。わかってて聞くなんて、全く嫌になるよなぁ…」

”何もない”現状を再確認させられて、思わずぼやいてしまう。
そんな話とは無縁のメンバーの一員として、聞いてくれるなと言わんばかりの不機嫌なオーラを深司は漂わせていた。

「そのうち見つかるって。いないかな、良い人!」
「善人止まりになりそうなんだよな、は。」
「どうして?」
「勉強や行事の仕事はテキパキこなしてるイメージがあるけど、色気とか恋愛要素が感じられない。」
「酷っ!深司ひどっ!どうしたらいい?」
「そんなの、俺が聞きたいよ。」

深いため息をつきながら、思わず前のめりになった身体をは引っ込めた。
彼氏ができるのは何年先のことなんだろう、と自分の運勢を呪う。
さきほど購買で買ってきた飲みかけのジュースを口へ運んで気分をリフレッシュさせた。

「あ〜、食欲と睡眠欲だけで生きていくしかない。」
、それ…」

深司が目を丸くさせていた。
そういえば、私が買ったのはオレンジだったはずなのに、口の中ではグレープの味が広がっている。
あ…、と理解できたときに思わず声が漏れた。

「えっと…飲んじゃった分…こ、こっち飲んでもいい…よ?」
「…そういうところが色気ないんだって。」

深司はオレンジジュースを一口飲むと窓の外に目をやった。
二人はジュースの味を噛みしめながら、次の授業のチャイムが鳴るのを待つことにした。
他の恋愛無縁メンバーにも言えない、内緒事。

 

−Fin−

 

(2016/04/17)