陽射しが放課後の校舎に反射して、白い壁がキラリと輝いている。

 

イートミーしぐなる

 

校舎内は種々雑多の音色が溢れ返っていた。
至る所で吹奏楽部員が練習している様子が伺える。
階段を上がりきり、教室の扉を開けると、ここにも部員が一人いた。

「あ、さん。」
「ビックリしたー」
「驚かせてゴメン。委員会の資料忘れちゃって。キミはここで練習してるの?」
「下手だから、聞かれたくなくて。」

さんはフルートを机に置くと、うんと背伸びをした。

「向いてないんだよ、きっと。」
「そうかな?さっき吹いてたさんの音色、俺は好きだよ。」

落ち込んでいたかと思えば目を丸くし、次第に顔が赤くなった。
からかっているつもりはないが、表情が手にとるようにわかりすくて非常に面白い。

「あ、ありがと…っ!?」

気がついたら目の前にさんがいた。
否、自分から向かっていったことを数秒経ってから自覚した。

「…ご、ゴメン!カラダが勝手に…」
「大…丈夫。」

資料を持って逃げるように教室を去ろうと、扉の前まで足早に向かった。

「鳳くん!」

呼び止められた方を振り返るとさっきまでの自信のなさそうな彼女はいなかった。

「フルート、頑張るね。鳳くんにおまじない…してもらったし。」
「また聴かせてくれるかい?」
「もちろん。」

教室から出ると、すぐフルートが吹かれ始めた。
もしかしたら俺は彼女の音色に誘われてきたのかもしれない。
響き渡る音色に耳を傾けながら、鳳は教室を後にした。

 

−Fin−

 

(2013/04/19)