この日を待っていたのは、間違いなく私だけではないだろう。

 

クラッカー

 

片手に膨らんだビニール袋を携えたは日に焼けて蒸し返している道路を歩いていた。
数メートル先にはモヤモヤと蜃気楼が見えている。
それもそのはず、今日の最高気温は今年の夏の間でも1,2を争うほど高い。
一切の日陰が見当たらない中、ペットボトルの既にぬるくなったお茶を飲み干した。
永四郎の家までは一番大きな通りの脇道を抜け、サトウキビ畑を越えたところにある。
お昼に飛行機が到着するから、家へ帰ってくるのはそろそろだろう。

「あとちょっと…よいしょ。」

は重そうに荷物を持ち直すと、進む足を速めた。
家の前まで来ると、ちょうどお義母さんが玄関先に立っていた。
後ろには大きな荷物を担いだ永四郎がいた。
肌は以前より、より黒く焼けている気がする。視線が合うと、担いだ荷物も忘れて軽やかに近寄ってきた。

「おかえり、永四郎。」
「来てくれたんですね。会いたかった。」
「応援行けなくてごめんね。夏は収穫時期だから…」
がうちなーで応援してくれてるのに、勝てなかった。俺の方こそ…」
「はい、しんみりしない!そう思って収穫したてのゴーヤ、持ってきた。」
「ふふっ、貴女に会うと、急に元気になれますねぇ。」

家に入ると、既に慰労会と称した夕飯の準備が整っていた。
片付けを終えた永四郎がダイニングに行くと、先ほどまでデンと1本構えていたゴーヤが丸くなっていた。

「全国大会、お疲れ様!ゴーヤチャンプルつくってみました。今日は千切り大根を入れてみました。えっへん。」
「チャンプルーぐらいで威張らないでください。」
「これはおいしいんだから、ゼッタイ!」
「有り難く頂きますよ。」

ちょっぴりふくれっ面なを眺めていると、フッと笑みがこぼれた。

「ありがとう、。チャンプルーおいしいですよ。」

 

−Fin−

 

(2013/08/21)