「これでよし!」
Boom
観月さんに頼まれていたデータ整理がようやく終わった。
細部までこだわる彼のことだ。きっちりやらないと後でガミガミ言われてしまうだろう。
思っていたより早く終わったことだし、早速渡しに行こう。
「観月さーん。」
「あぁ、さん。どうかしましたか?」
「データがまとめ終わったのでお渡ししようと思って。」
「さんはいつも仕事が早いですね。」
資料を渡すと、観月さんはすぐに目を通した。
「んー、これは…」
観月さんはこちらを見ると、眉間に皺を寄せた。何かまずいことでもやってしまっただろうか。
先ほどまでの作業を思い出し、必死で思い当たる節はないか探し始めたときだった。
バシンッ!
と大きな音が鳴った。左耳から音が直に伝わる。
頬が痛い。熱を帯び始める頃にようやく気づいた。
私はビンタされたのだ。
「み、づきさ…ん?」
「すみません。いきなり貴方を打ったりして。蚊が止まっていました。」
観月さんの手には黒と赤が入り交じった、潰された蚊がついていた。
「で、データに不備があったのかと…」
怒られたのではなかったことに安堵してしまい、ドッと泣き出してしまった。
「あぁ、本当にすみません。貴方はしっかり仕事をこなしてくれるので、私は助かっています。そのような心配は無用です。さぁ、頬が腫れる前に冷やしにいきましょう。」
「は、はい。」
−inテニスコート−
「どうしたんですか、赤澤さん。」
「裕太、見てみろ。観月がをビンタしたぞ。」
「えぇ!?」
「泣き出したな…何やってるんだ観月は。」
「どうしたんでしょうね。あ。」
「今度は抱きしめた…?」
「観月がご乱心だーね。真面目に練習するだーね。」
「そうだな。とばっちり喰らわないようにするか。」
このあと、メンバーの練習効率が良くなったため、明日からの練習メニューが増やされることになったらしい。
−Fin−
(2012/08/04)