朝、目覚めるのが億劫になってきたこの頃。

 

オータムナイト

 

そろそろ夏物を衣更えする時期になった。
私は半袖のTシャツを畳んで、秋物の入っている箪笥を引き出す。
愛しのセーター様が現れると同時に、独特の香りが辺りに急速に拡散していった。

「うっ、樟脳くさい…」

私はこの臭いが一番嫌いだ。おじいちゃんおばあちゃんをどうしても連想してしまうのだ。
一旦、引き出しを押し込んで架空老人とサヨナラした。
部屋の一部だけが樟脳の香りで染まっていく。少し、残り香が鼻についてまわる。

「もう終わったかな?」

周助は腕を摩りながらやってきた。まだ収納されていない夏物の山を見て状況を把握する。

「あー、ごめん周助、まだ整理してない…」
「くすっ」

笑うだけで、何も言わないときが一番怖い。一体何を思いついたの?
周助は私が今締めたばかりの引き出しを開けたので、樟脳の香りがまた漂ってきた。
1枚のセーターを取り出すと、それを着た。

は寒くないの?」
「んー、寒…くない。大丈夫。」
「我慢しちゃダメだよ。」
「ホントに大丈夫だっ…!」

頭の先から上半身の終わりまで、一気にセーターに包まれた。頭は通せない。
なぜって?周助が着てるセーターだからだ。目の前はTシャツに包まれた周助の胸板。

「捕まえた。」
「出してよ〜!」
可愛いから駄目。」
「もー!」

あれほど嫌いな樟脳の香りが、周助に中和されていく。
もう少し、と暫く周助の胸に顔をくっつけていた。

 

−Fin−

 

(2010/10/12)