Once upon a time...
こんな話もあります。

 

朱ずきんPart.2

 

メールが届いた。からだ。内容は『図書室で待ってるね』というもの。
どうせ日頃の愚痴を聞かされに行くんだ。早く行ったところで自分に利益はない。
教室から2,3歩出たあたりで、身体にまとわりつくような視線を感じた。

「何か用?」
「そっちから話してくるたぁ、意外やの。」
「…」
「あー、待ちんしゃい。大事な話があるぜよ。」

無視して立ち去ろうとすると呼び止められた。
大事な話と言われたが、向こうは私に話があっても、私からは何一つ無い。
先日のこともある。ここは一刻も早く逃げなければ。

「行くところがあるから今日は聞けない。それじゃ。」
「明日はええんか?」
「明日も駄目。」
「明後日は?」
「ごめん。」
「…いつなら空いてるんじゃ?」
「あなたとは話したくないから一生無理!」

らしくない。そう感じた。自分の口からきつい言葉が出てくるとは思わなかったから。
けれども仁王は少しも驚いた様子はなく、寧ろ何か企んでるといった表情をしている。
見覚えのある、顔。
頭のどこかで警鐘が鳴り響いた。気がつくと重心は前に傾き、身体は走り出していた。

!」

図書室には、本を読みながら眉間にしわを寄せているがいた。
の顔が見えた途端に口から不満が漏れだしていた。
親がああだの、部活がこうだの、色んな話題があがってくるが、そんなことどうでもよくて。
教室から図書室まで、あいつが付いてこないか心配だ。
事情をに話してみると、目をギョっと見開いて

「先に言いなさいよ!」

と怒られてしまった。

「だって話する隙をくれなかったじゃん。」
「とにかく書棚のかげに隠れなきゃ。ほら、急いで!」

図書室の入り口が見える位置に隠れて待つこと2,3分。
周囲を見回しながら仁王がノコノコと現れた。

「ここにいるんじゃろ〜?。」
(なんで名前で呼んでくるワケ!?)

入り口以外に脱出できる場所はない。
仁王は反対側の棚から捜索し始めた。このままではまずい。
このピンチを切り抜けようと、は鞄から携帯を取り出した。

「どうするの?」
「毒をもって毒を制す、よ。」

横から画面を見せてもらった。メールの送り先は...て、テクノゴリラ?

「誰これ。」
「しっ、仁王が近づいてきた。もっと奥に行かなきゃ。」
「おーい、出てきんしゃい。」

こみ上げてくる笑いを必死で堪えつつ、と奥の方へ移動する。
移動したところで、二人がいる列を覗かれると仁王に見つかってしまう。
棚の厚みに隠れたとしても、図書室から永遠に帰れない。
この状況下、はどうやらメールを送信したらしい。

「何やってんの。」
「この状況を乗り切る為よ!もう少しだけ我慢しなさい。」

足音が大きくなるにつれて、心臓のペースが速まる。
三人以外に人がいないこともあってか、反響する音が身体に染みこんでいく。
もう、逃げ場がない。ドクンと心臓が大きく飛び跳ねた。

「仁王!」

とてつもなく大きな声がした。仁王の視線が声の方へ自然と向いた。
の隣で「セーフ!」と小さい声が聞こえた。どういうことかは姿を見ただけで分かった。テクノゴリラだ!

「あーぁ、見つかったナリ。」
「練習をさぼるな!たわけが!」

仁王が小さくなって図書室を後にした。
仁王が出て行ったのを確認すると、二人で深呼吸して緊張を解きほぐす。

「あの人って、テクノゴリラだよね!」
「あれ、真田知らなかったの?うーわー、真田かわいそ〜。」

自信満々に答えたら、に大爆笑された。

 

−Fin−

 

(2009/03/29)