「あ、また枕にしちゃった。」

 

甘美な時間

 

目が覚めると頭の位置に違和感があった。
寝る前はすぐ横にクラウザーの顔があったはずなのに、山のように隆起した筋肉が目の前に立ちはだかっていた。
枕よりも程よい硬さと高さを併せ持つ彼の腕を、しばしば枕代わりにしてしまうの悪い癖だ。
クラウザーを起こさないように起きると、はご飯と身支度を始めた。



なかなかリビングにやってこない。まだ寝てるのかな。
寝室に戻ると、クラウザーはちょうど上体を起こしたところだった。

「おはよう。そろそろ支度しないと遅刻するよ?」
「そうだな。」
「早くご飯食べよっ。」

部屋を出ようと、クラウザーに背を向けたときだった。
踏み入れたはずの足が地面につかない。
全身が宙にふわりと浮いた。
気付くと、彼に片手で担がれている自分がいた。

「ジャック・クラウザー?何してるのかな?重いから降ろした方がいいと思いますよー。」
「このくらいじゃ筋トレにもならないな。」
「私は筋トレの道具ですか…ちょっと、降ろし…きゃっ」

急に歩き出したので、は思わずクラウザーの首に手を回してしがみついた。
傍から見れば、まるでが甘えてるようだ。

「フッ。」

クラウザーは意地悪そうに鼻で笑った。

(く、悔しい…)

リビングまで来ると、意外にもあっさりと解放された。

「高かった…」
「怖かったのか?」
「怖いに決まってるでしょ!不安定だし…」
「俺が落とすわけないだろ。よしよし。」

彼はの髪がくしゃくしゃになるまで撫でた。私は犬扱いだろうか。

「あぁ!せっかくセットしたのに…」
も遅刻だな。」

クラウザーはクスクス笑いながら朝食を食べ始めた。

(か、確信犯か…!)

 

−Fin−

 

(2011/04/28)

クラウザーかジャックで悩んだ挙句、フルネームで呼ばせる結果になりました。