「見たことある…」

 

極上のワインはデザートの後で

 


呼び出しがあったのはつい一時間前だ。
正装で来いと言うもんだから、慌ててドレスを引っ張りだして、マッハの速度で準備した。
我ながらよく間に合ったもんだ。
言われた場所に来てみると、数ヶ月前テレビで映っていた一流料理店が目の前にあった。
間違えたかなぁ、こんなところに用があるはずがない。
ちょうど待ち合わせの時刻だったので、遅刻の旨を伝えようと携帯を取り出した。


「よく間に合ったな。」
「ジャック!」


声がした方に振り向くと、同じく正装でやってきたクラウザーがいた。服のサイズが無かったのか、腕のあたりがピッチリとしている。


「お譲さん、お手を。」
「らしくないわね…もしかしてこのお店に入るの?」
「あぁ。」
「冗談でしょ?ここって確か予約しないと…」
「3か月前からしてある。」


遅刻してたらどうするつもりだったんだろう。
そんなに前から予約してるんなら、いきなり呼び出さなくてもよかったのに。
店内はシャンデリアが光り輝き、この店の特徴であるステンドグラスはまるで教会にいるかのような錯覚に陥りそうになる。
ディナーなんて、食べ方すら危うい状態。
こんな場所に自分がいて場違いじゃないのかと不安になりつつも、意識だけはしっかりしておこうと気を引き締めた。


「どういう風の吹き回し?」
「食べてみたいって、喚き散らしてたのはだろ?」
「わ、喚き散らしてなんか…」
「満足か?」
「…幸せです。すっごくおいしい。」

の感想を聞いて、クラウザーはウェイターに小さな包みを持って来させた。
お楽しみ袋の中身は何だろう。
クラウザーが取り出したものは、花がたくさん詰まった小さな箱だった。
花の真ん中にはリングケースが埋まっていた。

「これって…!」
「俺と結婚してくれ。」
「本当に、私でいいの?」
「お前以外に誰がいる。」
「喜んで。」


-Fin-



(2011/05/10)
タイトルはバイオ4の古城Chapter3-3より。