軽快なキータッチの音を立てながら、レオンは唸っていた。

 

Exceptional

 

期限までにレポートを仕上げなければならない。
警護任務に関する細かい計画、情報収拾の結果報告等…
外では動き回り、家では苦手な書類と格闘戦だ。
が横で何か言っているが、とりあえず肯定しておけば大丈夫だろう。
まずはこの作業を終わらせなければ…っ!?

「何するんだ!」
「レオンの馬鹿!」

は突如、クッションを投げつけてきた。
おかげで山のような書類がバラバラだ。
書類を集める間もなく、はドアを強く締めて出て行ってしまった。

(どうしたんだ?)



「明日で付き合って3年経つけどさ、レオンはこれからの事どう思ってるの?」
「んー」
「そろそろ何か言いたい事とかなーい?」
「んー」
「いつプロポーズしてくれるのかなって、ずっと待ってるんだけど、まさかしないつもり?」
「んー」

冗談で言ってみただけなのに。嘘でしょ?
結婚する気なかったの?
てっきりするんだと思ってた。
今までの時間は一体何だったの?
忙しいときも辛いときも一緒に支え合ってきたのに、なんだか馬鹿みたい。

「レオンの馬鹿!」

あまりにも酷い。
そんな重要なことを軽い返事で済ませる?
物に当たり散らかして、暴言を吐き捨てて現実から目を背けてしまいたい。
頭に血が上って、とっさに家を出てきてしまった。
自分の持ち物は全て置いてきてしまった。
でも、今は家に帰れるわけがない。
幸いお財布は持っているし、このまま暫く身を潜めていようか。
いっそのこと遠出でも…と考えたが、こんな夜遅くに何処へ行こうというのだ。
何も考えずに家出した自分がバカバカしく思えてきた。
このまま街をほっつき歩いて、野垂れ死んでもいい気分だ。

スッ…と、後ろで誰かの手が触れた。
もしかしてレオン?
軽く心を弾ませながら、思わず笑顔になりそうな顔をふくれっ面に変えて振り向いてみた。

「だ、誰!?」
「可愛いね、君。」

一度も面識のない男。
それだけで警戒心は沸いてくるのに、腕を強く掴まれてしまった。

「や、離して!」
「こっちに来なよ。いいお店知ってるんだ。」
「い、嫌です!やめてくだ…きゃっ!?」

男の顔が視界から突如消えた。
頭を強打して、呑気に口を開けたまま気絶している。
背後から回し蹴りを喰らって男は伸びていた。


、大丈夫だったか?」
「…レオン。」

もう見つかってしまった。
一瞬だけ嬉しさがこみ上げてきたが、素直に喜べない自分がいた。


「どうして急に家を飛び出したりしたんだ。」
「あなたが結婚しないって言ったからでしょ!」
「俺がいつそんなこと言ったんだ。もう少し落ち着いてから話そうと思っていたんだが…」

レオンはポケットを探ったが、肝心の物が見当たらない。

「しまった、家に置いてきた。」
「もう…レオンのバカバカ馬鹿ー!」

 

−Fin−

 

(2012/01/28)

こういうとき、レオンは抜けてると思う。