軽快なキータッチの音を立てながら、レオンは唸っていた。
Exceptional
期限までにレポートを仕上げなければならない。
警護任務に関する細かい計画、情報収拾の結果報告等…
外では動き回り、家では苦手な書類と格闘戦だ。
が横で何か言っているが、とりあえず肯定しておけば大丈夫だろう。
まずはこの作業を終わらせなければ…っ!?
「何するんだ!」
「レオンの馬鹿!」
は突如、クッションを投げつけてきた。
おかげで山のような書類がバラバラだ。
書類を集める間もなく、はドアを強く締めて出て行ってしまった。
(どうしたんだ?)
*
「明日で付き合って3年経つけどさ、レオンはこれからの事どう思ってるの?」
「んー」
「そろそろ何か言いたい事とかなーい?」
「んー」
「いつプロポーズしてくれるのかなって、ずっと待ってるんだけど、まさかしないつもり?」
「んー」
冗談で言ってみただけなのに。嘘でしょ?
結婚する気なかったの?
てっきりするんだと思ってた。
今までの時間は一体何だったの?
忙しいときも辛いときも一緒に支え合ってきたのに、なんだか馬鹿みたい。
「レオンの馬鹿!」
あまりにも酷い。
そんな重要なことを軽い返事で済ませる?
物に当たり散らかして、暴言を吐き捨てて現実から目を背けてしまいたい。
頭に血が上って、とっさに家を出てきてしまった。
自分の持ち物は全て置いてきてしまった。
でも、今は家に帰れるわけがない。
幸いお財布は持っているし、このまま暫く身を潜めていようか。
いっそのこと遠出でも…と考えたが、こんな夜遅くに何処へ行こうというのだ。
何も考えずに家出した自分がバカバカしく思えてきた。
このまま街をほっつき歩いて、野垂れ死んでもいい気分だ。
スッ…と、後ろで誰かの手が触れた。
もしかしてレオン?
軽く心を弾ませながら、思わず笑顔になりそうな顔をふくれっ面に変えて振り向いてみた。
「だ、誰!?」
「可愛いね、君。」
一度も面識のない男。
それだけで警戒心は沸いてくるのに、腕を強く掴まれてしまった。
「や、離して!」
「こっちに来なよ。いいお店知ってるんだ。」
「い、嫌です!やめてくだ…きゃっ!?」
男の顔が視界から突如消えた。
頭を強打して、呑気に口を開けたまま気絶している。
背後から回し蹴りを喰らって男は伸びていた。
「、大丈夫だったか?」
「…レオン。」
もう見つかってしまった。
一瞬だけ嬉しさがこみ上げてきたが、素直に喜べない自分がいた。
「どうして急に家を飛び出したりしたんだ。」
「あなたが結婚しないって言ったからでしょ!」
「俺がいつそんなこと言ったんだ。もう少し落ち着いてから話そうと思っていたんだが…」
レオンはポケットを探ったが、肝心の物が見当たらない。
「しまった、家に置いてきた。」
「もう…レオンのバカバカ馬鹿ー!」
−Fin−
(2012/01/28)
こういうとき、レオンは抜けてると思う。